肉!について思うこと


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Campovillaカンポビジャのイベリコ豚ベジョータの肩ロースを10日間エージング(熟成)の試食。熟成の効果としては肉の風味がよく程良く落ち着いた味の濃さが出てきている。柔らかくもあるが、やはり肉の若さがとれた落ち着きの良い食感と味わいと言うのだろうか、があると思う。こういった熟成をしていて思うことだけども、肉を柔らかく(だけ)しているのではなく肉の味わいを引き出している結果、多少柔らかくなっているのだと思う。

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単に肉を柔らかくするだけなら、パイナップルの果汁(なぜか缶詰は効果なし)に代表されるような果汁につけ込んだり、業務用的軟化剤などを使ったり、それこそ長時間煮込んだりすることで柔らかくなる。我々日本人は、美味しさの一つに(特に肉の美味しさの最重要課題に)「柔らかくて美味しい!」という理由がある。口に含んだときの食感、特に舌触りとか歯ごたえを含む柔らかさなどが、その食べ物の美味しさにかなり直結しているのではないだろうか。口の中でとろけるような味わい、もっちりしていて、プルンとしていて、、、、など美味しさの代表的要素に歯ごたえがある。

テレビを見ていて芸能人などのレポーターが肉を食べて言うことは、ほとんどの方が「柔らか〜い」とか「柔らかくって美味しい〜」など。ジューシーで美味しいとか、肉の味が濃い、とかはあまり言わないと思う。これは昔からなんだと思うけど、独断で言えば肉の食べ始めとか肉が輸入されて日が浅い昔に、間違って美味しくない味も素っ気もないミンチ材のような牛肉が入ってきてしまった際に、まだそのときの日本は牛肉をレアとかミディアムで食べる習慣もなく、火を入れすぎでかちんかちんに焼いたり、脂もなく赤身パサパサの肉を中途半端に煮たりしたために、かなり堅い牛肉の料理を食べたことがあったに違いない。
まだ独断は続くが、ちょっと前(数年前)のテレビ番組でさえアメリカ産の牛肉は穀物で肥育をしていてオーストラリア産は草の肥育だからアメリカ産の牛肉は日本人にはなじめるが、オーストラリア産は草くさくて美味しくない、、、などと言っていた番組があった。(オーストラリアの方ごめんなさい)オーストラリアも穀物肥育をしているし、今や和牛のような牛も肥育をしている。しかもグラス肥育の大きな牛も現地で食べてみると美味い!!、もちろんステーキ専門店だけども田舎のレストランでも美味く、これが草だけで肥育されたものなの?と思うほどだったりする。聞いてみると肉をしっかりと熟成して納品する肉屋に頼んでいるとか、レストラン独自で大きな冷蔵庫をもっていてその中で骨付きのままエージング(熟成)をかけている。草だけの肥育でも熟成がしっかりしていると驚くほど美味しくジューシーなステーキになっている。そして決して口の中で蕩けるようでは絶対にないけど適度に柔らかくかめば噛むほど味わい深い肉になっていると思う。

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写真はCampovillaカンポビジャのイベリコ豚ベジョータのロースを骨付きのまま熟成をしているところ。熟成が完了したらこの後、除骨をして脂などを取り除いてロースの正肉にする。
写真のロースはジャパンカットとも言うべきものでスペインのロースにはあまり見られないカット。そもそもスペインの肉屋は肉をかなり小さく分割してしまう。これは肉の味と食感(筋肉繊維)が違うところを分けて分割することによって肉をわけ、料理にあった調理方法で料理をすることが出来るためだ。ちょっと経験がある方なら思い出して欲しいのは、豚肩ロースのステーキをソテーした際の、火の入れ方の難しさがあると思う。特にスペインで言うプレッサ(マクラ)の部分が切り身で斜めに入っているところなどは特に難しい。1枚のステーキにいくつもの部位の部分が入っていて肉の線維が一定していない。斜めに細胞繊維が走っている部位(プレッサ)は火の通りが遅いから他のところが焼けてもプレッサのところはまだ生焼けになってしまうし、プレッサに火を十分入れると他の部位が焼き過ぎになってしまう。

肉の中でも一番大きな肉繊維になっている部位はロースであって肩ロースなどは肉の線維で分けていくとバラバラになってしまう。スペインでは肩ロースの一部をカベセロと言って日本の肩ロースとは違う。我が国の肉文化はスライスの文化なのでこのように肩ロースなどもいろんな部位が入っていても薄くスライスして煮てしまうにはあまり関係がなく肉汁などの美味しさとは無縁かも知れない。
日本の肉に対する調理は昔からしっかり火を通す料理が多く、逆にしっかりと火を通しても柔らかく食べられる牛肉が作られてきた。その代表例が和牛であって霜降りの肉だと思う。しっかりと火を通しても肉の間の脂があり柔らかく食べられるし、肉をステーキで火を入れすぎても同様に柔らかく肉汁のような脂汁もしっかりと出てきてジューシーに美味しく食べられる。しかしこれは本来の肉汁ではなく脂の汁なのであまり多くは食べられない。口に入れたときの柔らかさと脂汁で味わいがごまかされてしまうというか麻痺してしまうのかも知れない。でもってあまり喜ばしくないことに、最近の牛肉は特にカットしたときの色合いを重んじている。つまり色が薄いピンク色じゃないと売れないらしい。。。でも本来の肉の味わいは一般的には肉の色が濃いほどに味も濃い。カットしたときの色合い=売れ行き、に関心があることで、肝心な肉の味が逆に薄れてきてしまっていることは、かなり自分としては悲しいことだ。肥育日数も浅く出荷される牛肉はますます味わいも浅くなってしまうかもしれない。

豚でも同じことがいえる。5ヶ月ぐらいで出荷をされる通常の豚は、味が濃く美味しくなる飼育日数までは飼育をせずに飼料代との因果関係で市場に効率の良い形で出荷をされることになる。飼育日数が少ない豚はそこそこに柔らかく肉の色も浅いからマーケットにも好まれることになる。

イベリコ豚などはその逆をいっている豚かも知れない。飼育日数は16ヶ月前後でコストパフォーマンスはかなり悪く飼料代もかかるしデエサ(どんぐりの森)で放し飼いをするベジョータなどは土地代とデエサの管理代もかかる。5ヶ月で出荷できる豚に比べて飼料代も3倍以上かかるし飼育の手間もかかる。こうやって出来た豚が価格競争力があるわけがない。十数年前まではイベリコ豚の飼育は今ほどではなく、ハモンイベリコベジョータに代表される生ハムを作ることがメインとされて飼育をされてきたらしい。
ごく近年になってからイベリコ豚の肉の味が注目され飼育が盛んになってきた訳だが、本来の豚の原種に近いイベリコ豚を通常の豚の3倍以上の飼育と手間暇かけて育てた結果が、豚本来の味わいを引き出しているのかも知れないな〜と僕は思っている。

イベリコ豚の美味しさは、決して柔らかさではなく十分に肥育をされた豚本来がもっている肉の味の濃さと肉質のすばらしさだと思う。これを柔らかさが他の豚に比べて、、、など比較をしていただけでは見えてこないかも知れない。
話は少し戻るけども、柔らかいから美味しい、、肉の色がきれいだから美味しそう、と肉を評価していたのでは肉はどんどん美味しくなくなってしまうし、我が国の肉文化が育っていかないような気がしている、と思うのは大げさなのだろうか。

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