
スペインはセゴビアの、仔豚で有名なレストランの仕込みからお客様への提供まで、私(グルたむ)が報告をさせて頂きます。 このレストランは、セゴビアでも1,2位のレストランで、規模も相当なもので数百席あります。 仔豚は、マタデロ(屠殺場)より生の状態で毎朝届きます。大きさは4kg~5kgくらいで、基本的に味付けは塩だけです。
よくあることですが、スペインでは塩と言いますと「岩塩ではなく海塩です!」。理由は海塩のほうが味が良いからです。 写真は、仔豚の内臓側(内側)に海塩を振っているところです。反対側の皮側も降りますが、塩が浸透するために焼く前の数十分前に塩を振り、次の写真のように内側を上にして塩を浸透させていきます。

こちらが塩振り後に落ち着かせている状態です。常温に近づけることと、塩を浸透させる為の2つの理由からこのようにしています。そしてこの皿は重要で、大きなオーブンで焼く際に肉汁を逃がさず貯めるためと、この皿(セラミック)からの反射熱で、熱を通すための役割があります。肉汁は最後にソースにします。

オーブンに入れる前に写真では分かりづらいのですが、仔豚の皮側に針を刺していきます。いわゆる小さな穴を空けるのですが、穴を空けることによって皮の表面が必要以上に膨らむのを防ぐためです。

焼きます。焼く工程は2つの工程に別れています。 1番目の工程は、下焼きですが写真のように炉の中で仔豚が回っていますが、この天板にいれて焼いていきます。焼き時間は3時間前後ぐらいだったと思います。じっくり焼くことで、柔らかさも出して行きます。下焼きで火を入れすぎずに、しっとりと焼き上がるような火加減になっています。

下焼きが上がった物は次々に休ませていきます。この時点で皿に出ている貴重な肉汁を取り除き、味を調えてソースにします。僕が店主に聴いたところ、薄めもしないし煮詰めもしない、そのままソースにしているんだ!と話をしていました。 基本はもちろんこれで良いんだと思いますが、我々日本人には仔豚でもミルキーな味わいが好みではない方もいますので、そういった方々には、このソースなどの味付けで調整をしていくんだろうと思います。

本焼きです。 ここは大きな電気式のコンベクションオーブンで焼いていました。なぜこのコンベクションを使っているのか?と聞いたところ、「火力の立ち上がりが早くて焼き上がりが均等になるから」と言っていました。が、実際には下焼きはいずれにしても、本焼きは使い慣れたオーブンや、それこそ薪釜など最高だと思います!

客席のお客さんには、こういった大きめのワゴンにのせたスタイルで、客席に持って行かれます。手前の壺は、焼き汁をもとにしたソースです。仔豚に良く合うと店主が言っていた、リベラディルデュエロの赤ワインも、お客さんのオーダーでしょうか、1本のってます。余談ではありますが、ワインは赤ワインも白ワインも合うと思います。意外と盲点ではありますが、皮ごと焼いた仔豚は繊細な肉繊維ですが、しっかりした味わいです。白も赤もボディがしっかり目が合うと思います。

いよいよ名物のカットです。このように皿でカットしていきますが、カットが早く瞬時に切り分けられます。皿でカットする理由ですか?それは皿でも切れるほど柔らかいということになるでしょう。そのため下焼きはある程度しっかりした時間をかけて焼いていきます。

このように皿だけによって切り分けられます。右の方は、肉汁の壺からソースをすくって肉の皿に入れていきます。肉に直接かけないのは、皮のパリパリ感がなくならないためです。常連の方々は、この切り分けを見ながら、今日はこの部位とか、私はここが好きとか次々に自分の好みに合った部位をオーダーしていました。

殆ど肉汁だけのソースですが実際に食べてみますと、このソースが付いているのと付いてないのは大きな違いがあります。

こちらはロースの所ですが、肉の繊細さときめの細かさが、完全な骨付きで手間暇かけて焼くためにとても高いレベルで焼き上がっています。肉の線維もしっかりしているのでソースを吸い取り、一緒に付けてたべることで更に美味しく食べることができるようです。皮の表面はパリッとしていて、肉は繊細でジューシー、しかしながらしっかりとした味わいがあります。他の肉では体験できない味わいかも知れません。