ワイン愛好家の間でよく使われる表現として、「ワインを開かせる」という言い方があります。
飲み頃になるまで長い熟成期間を必要とする上質な赤ワインは、長時間空気に触れることなく保管されてきました。
長い熟成期間を経てようやく飲み頃になったワインは、開けてすぐに飲んでもワイン本来の味わいが全く感じられません。
その状態を、「ワインが閉じている」と表現します。
ワインは、抜栓をして空気に触れさせることで、ワイン本来の風味を取り戻していきます。
そして、ボトルの中で眠っていたワインを目覚めさせることを、「ワインを開かせる」と表現しているのです。
ワインをおいしく味わうためには、抜栓してすぐに飲むのではなく、少し時間を置いてワインを開かせる必要があります。
ワインを開かせるには、ワインの種類やタイプによっても異なりますが、古いワインであれば30分間から1時間、10年未満の若いワインであれば2時間から3時間ほど要します。 ワインを開かせる時間を少しでも短縮したいときに行うのが、デキャンタージュです。
デキャンタージュとは、抜栓した後にデキャンタと呼ばれる容器にワインを移し替えることです。
ワインをボトルからデキャンタに移し替えることで、たくさんの空気とワインを触れさせることができるため、より短時間でワイン本来の風味を取り戻すことが可能になります。
また、デキャンタージュを行うもう一つの理由は、ボトル内に見られる澱を取り除くことです。
澱がボトル内に舞っている状態ではデキャンタージュしにくいので、抜栓する数日前からワインボトルを立てて置いておきます。
ワインをボトルからデキャンタに移し替えるときは、ボトルの肩のあたりを明かりで照らして透かし、澱が入り込まないように慎重にゆっくりと行います。
一般にデキャンタージュしたほうが良いとされているワインは、澱の発生しやすいボルドーの古い赤ワインと言われていますが、若いワインでも空気に触れさせることで香りが増すことを期待して行うことがあります。
一方、澱が少ないブルゴーニュの赤ワインや白ワインは、デキャンタージュを行わなくても良いとされています。
デキャンタージュを行うのと行わないのとでは、ワインの味わいに格段の差が出ます。
せっかくのワインですから、ひと手間をかけておいしく頂いてみてはどうでしょうか。
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