パックされた鹿モモ肉は、ガーネットのような深い赤。いかにも鉄分が豊富そうで、押しの強い味わいを持っていそうな色ですが、ニュージーランド産のこの鹿肉は極めてマイルドで柔らかです。
香りにも味にもクセがなく、脂肪のほとんどない赤身は、ほぼ生状態で食すカルパッチョに向いています。まぐろのお刺身にも通じるようなきめ細かさとしっとり感で、生肉に抵抗のある方も比較的受け入れやすいだろう舌触り。
商品案内に「表面を焼いてお召し上がりください」とあったので、まずは少量のオリーブオイルを引いたフライパンで、お肉のまわりをぐるりと焼き付けました。
表面を簡単に殺菌するようなつもりで、舌触りの邪魔にならないごく薄い焼き壁を作ります。あらゆる面に薄壁ができたら、氷水につけて急冷。これで下準備はOK。
予め冷蔵庫に入れて冷やしておいたお皿に、渦巻きを描くようにごく細く蜂蜜を垂らし、塩コショウを振ります。薄くスライスしたお肉をその上に一段並べ、再び蜂蜜と塩コショウ。もう一段お肉を並べ、三たび蜂蜜と塩コショウを回しかけ、オリーブオイルも回しかけたら、スライサーで削いだパルミジャーノを散らします(写真下)。
ルッコラとたっぷりと上に盛って塩コショウ。パルミジャーノを更に削ぎおとし、“オリーブオイル イン バルサミコ”を振りかければできあがりです(写真中)。最後にかけるのは、もちろん自家製のドレッシングでも、ビネガー系抜きでオイルのみでも。
お肉と調味料とルッコラとチーズを重ねただけのお料理ですが、お肉の雑味のなさが爽やかに引き立って抜群のおいしさ。
私は“クセ”や“歯ごたえ”のあるお肉も大好きなので、鹿肉には「鹿だぞ」というインパクトが欲しいほうなのですが、このお肉は逆に、押し付けがましさのない澄んだ味わいによって印象的でした。
夏の前菜におすすめです。