写真をきれいに撮れなかったのが、残念なくらい深い紅。ルビーというよりガーネットのような色合いの、滴る宝石です。日差しが傾きかけた時刻の森の中で、赤いベリーを見つけたら、おそらくはこんな色に見えるのでは。自然が生んだ飲食物の美しさを、深々と感じる色でした。
商品説明には「優しく飲みやすいが、パワーがあるワイン」とありますが、私はパワーのほうをより強く感じました。デキャンタをして飲みましたが、かなり濃厚で野性的な一口目です。そつなくエレガントに仕立てられているわけではなく、葡萄という果物が持つ奔放な個性を、決して殺さずに慈しんで育てたような味わい。
飲み進むにつれ刻々と味は変わりゆき、野生味の角が取れると同時に香りが豊かさを増し出します。その変化が面白く楽しく、いつもよりペースを落としてゆっくりとグラスを傾けました。
このワインを空けたのは、父の喜寿祝いの日。前菜はフォアグラのテリーヌと生ハム、それにモツァレラのカプレーゼ。(いずれもグルメミートショップのお品です)。
けれど家庭の食卓なので、前菜を食べ切ってから次のお皿という厳密さはもちろんなし。シャンパン・白・赤とお酒が進んだ中、テリーヌと生ハムは少しずつずっと食べ続け、おかげでこのワインとの素敵なマリアージュも味わえました。
厳密なコース順に従わず、ランダムにお料理を食べていて気付いたのですが、このワインを一口飲むと、次に食べるものの味がくっきりとします。ワインの奔放な味わいと豊かな香りを以て口腔を洗うような感じです。けれど決して食べ物の味を損ねないところが、商品説明にある「口当たりにボリューム感、フレッシュ感がありバランスが完璧なワイン」ということなのかもしれないと思いました。