夫の実家でのバーベキューーは恒例行事。用意したお肉は、ウズラのモモ、ラムラック、イベリコ豚のタンとセクレトとトントロ。
スーパーマーケットのお徳用のお肉であっても、おいしさが格段にアップするのがバーベキューの魅力ですが、炭火の風味は強いので、味が単調になりがちなことも。
その点、食感の個性が豊かで味のしっかりしたこちらのwebショップのお肉なら、下味に凝らなくてもバラエティに富んだものとなり、飽きることなく食せます。
それぞれのお肉は下記のように調理。写真がラムのものなのでラムのレビューとして投稿しますが、いずれのお肉も焼き上がる度に歓声を呼ぶ好評でした。
[ウズラのモモ]
前日に塩をしてキッチンペーパーとラップで包んでおき、当日は水気を拭いてコショウを振り、マヨネーズで和えてコーティング。
焼き上がったらレモンを絞って供します。
[ラムラック]
前日に、余分な脂と筋を取り除いて塩を振り、ローズマリー(枝ごと)を貼り付けてキッチンペーパーとラップにくるんでおきます。
当日は骨2本ごとに切り分けて、カレー味のスパイスを振って焼き、供すときに骨1本ごとに切り分けます。
[イベリコ豚:タン]
当日に皮を削いで(気にならないようなら削がなくてもOK)薄切りにし、二つ折りにしつつ金串に刺します。
焼くときには折り目をやや拡げるようにして、中にも軽く火が通るように。
焼き上がったら、ごま油に塩とネギのみじん切りとレモン汁を入れて混ぜたものをかけます。
[イベリコ豚:セクレト]
前日に塩コショウを振り、ニンニクの薄切りをペタペタとたくさん貼付けて、キッチンペーパーとラップに包んでおきます。当日は削ぎ切りにして焼きます。
[イベリコ豚:トントロ]
ブイヨンで1時間ほど煮込んでから、大きめに切ってタレに漬け込んでおきます。
タレはうちの定番で、[トマトケチャップ 大さじ3/味噌 大さじ1/豆板醤 小さじ2/ごま油 小さじ2/砂糖 大さじ1/酒 大さじ2/しょうゆ 大さじ4/ねぎ 10センチ(みじんぎり)/しょうが 1片(みじんぎり)/にんにく 1片(みじんぎり)]の割合。
焦げやすいので焼くときにはやや気を付けて。
トントロ用に定番のタレを作っているときに、テラスに出した椅子に座り、同じ味付けをしたイベリコ豚のスペアリブを手にしながら、「りかちゃん(わたくしの本名であります)、これおいしい」と言った義父の笑顔を思い出しました。
恒例のバーベキューではあるけれど、実はかなり久し振り。家族の食事の中心にいた義父が亡くなり、義母が一人暮らしとなって以来、「バーベキューをしませんか?」とは言い出しにくくなっていたのです。それはもしかしたら暗黙の、服喪であったのかもしれません。
けれど義父の葬儀から、1年半が経った義母のお誕生日。ようやく「バーベキューでも」という言葉が口にできるようになりました。集まった家族は以前と同じようにテラスに椅子を並べ、炭をおこしつつビールやワインを飲み、そしてお肉を焼きました。
義母が義姉が義兄が姪が、ウズラをラムをイベリコ豚を手にしながら、「りかちゃん、これおいしい」と口々に。その笑顔は、義父の笑顔とよく似ていました。家族と一緒においしいものを食べている人間特有の、気を許しきってくつろいだ笑顔。
小さなバーベキューセットは、私と夫がかつて住んでいたジャカルタで購入したもの。当時シドニーに住んでいた義姉一家の元を訪ねたとき、マンションのベランダでのバーベキューが気に入って、ジャカルタに戻って全く同じものを買ったのです。
そんな話をしつつ、マヨネーズでコーティングしたウズラを手にしながら、「鶏のお肉をマヨネーズで和えるのって、大原さんに教えてもらったんだよね」と、義兄はシドニーのかつての知り合いの名を口にしました。
もう二度と住むことのないだろうジャカルタやシドニー。もう二度と会うことはないだろう大原さん、そして義父。
家族の食事には家族の歴史が包まれています。いま食すウズラとラムとイベリコ豚に、たとえウズラのモモ肉を食べるのが初めてであっても、家族がこれまで経てきた場所や会ってきた人が映るのです。
いずれ歴史となりゆく出来事もありました。バーベキューの参加人数は、前回も今回も8人。義父の葬儀の少し前に生まれた姪の子供が初参加。ウズラのモモに喜んで、口の両端からはみ出る骨を手でつかみ、たどたどしくもおいしそうに頬張って。
まだ私の名を覚えていないその子もいずれ、「りかちゃん、これおいしい」とくつろいだ笑顔を見せてくれるでしょう。そしてきっと私たちは、「ちっちゃい頃は、ウズラの骨が口の両脇から出てたよね」と口々に言うのです。