このワインは牛肉に合うね。このワインは鶏肉に合うね、とは言っても、、、50日しか飼育してないブロイラーのムネ肉と150日飼育している放し飼い地鶏のムネ肉とでは違うし、穀物肥育の牛肉と放牧された牛肉ではそれぞれ味わいが違うので、合うワインも違ってくると思います。
ここで放し飼い(放牧)という言葉が出てきましたが、家畜には大きく分けますと2通りの育て方があります。1つは囲いの中で飼育する方法と、2つめは放牧する方法です。 またジビエと言われる肉がありますが、それは2つめの中でも、野生という家畜とは違った場所で生きている特殊な動物です。ジビエの定義は「狩猟によって捕獲された野生の鳥獣」とありますが、ちょっとここで一考してみます。
ジビエって、味が濃いとか香りが良いとか様々なことを言われますが、鳥獣の種類はいずれにしても、野生で食べられるものは何でも食べ食糧を探し回って天敵から身を守り緊張して生きています。大自然は過酷で厳しいですから季節によって食糧が偏りそれが肉の味の特徴になったり季節により様々な食糧を食べているのも深みになっているのかも知れません。
ここでジビエという定義を、海に持っていったらどうでしょうか? それこそ天然物の魚介類はジビエだと思います。海藻類や様々なプランクトン類を食べる小魚もいるでしょうし、海の中で弱肉強食を繰り返すものもあり、肉食であって雑食です。そういった魚の身は、たとえ白身の魚でも肉々しくしっかりとしています。
ということで本題ですが、そういった魚介類も含めて、肉らしい肉は白よりも赤に合うものが結構ありますし、白身系の魚でも良く合う物があります。事実、ハモ、ヒラメ、カレイ、フグ、鯛、蟹、などはプレディカドール・ブランコに合いますが、プレディカドール・ティントやコンタドールまでの赤ワインにも良く合わせていますし、飲んでいる最中に白から赤に変えますと、魚貝を食べているときでさえ白だと物足りなくなり、戻れなくなってくるから不思議です。
話は前後しますが、僕は牛肉でも、しっかりと牧草地で放牧された牛肉が好きで、そういう牛肉ならしっかりした赤に合うような気がしていますし、最近では濃い色の牛肉が少なくなっていますが、そういう肉なら赤ワインに合うのだと思います。また飼育日数によっても肉の深みやしっかりさが変わってくると思いますので、赤に合わせるなら長い期間飼育された牛肉のほうが良いと思います。
最近では赤身の肉の美味しさを追求したドライエイジングビーフが時流ですが、赤身の肉の美味しさは肉汁の美味しさです。肉汁を調理から皿でカットして口に入れるまで、本当の意味での肉汁の保存の料理というのをもっと考えていきたいと僕は常々思っています。
また日本の肉の文化は「すき焼きの文化」だと僕は思っていますが、肉汁があふれんばかりのすき焼きって無いわけで、肉汁とはあまり関係ない料理です。肉のスライスされたものを思い出して下さい。肉の線維に直角にカットしています。すき焼きによく使われるリブロースなどでは、当たり前のカット方法です。しかしながらすき焼きのような薄切りでは、このカットでは肉汁は保存されませんし、もともと肉汁を楽しむ料理が皆無に近いのが日本の肉の文化の始まりかも知れませんね。

縦切りにより肉汁をしっかりたくわえられた肉 |
肉は、厚切りか繊維に平行にカットしてこそ、肉汁が保存されます。そして何処まで保存されるのが良いのか?ですが、口に入れるまでです。口に入れて本来の美味い肉汁がジュワッと口中に広がる!これが肉の美味しさではないでしょうか?
都内のあるフレンチレストランで、コンタドールと蝦夷鹿のヒレのマリアージュを楽しんだときのこと、ヒレのステーキが見たことのない形で出てきました。ヒレを8cmぐらいの幅に輪切りにして、それをソテーしローストして柔らかく火を入れたあとに、縦に半分にカットして出てきたのです。写真が無いのが残念ですが、丁度円柱を縦半分にカットしたような感じです。切り口は濃いロゼ色で縦に繊維が走ってます。
そうです、切り口が通常のステーキでは見たことがないあんばいで、縦に繊維が走っているんです!で、僕は内心喜んで「シェフこのステーキってなぜ?このような切り方なんでしょ?」と聞きました。そうするとシェフは「肉の線維に直角にカットしてしまっては、持ち味の美味しい肉汁が流れ出てしまうでしょう。。。」と。僕は喜んで、だったら口に入れるときは、このステーキも繊維にそって縦にカットして入れないとダメだよね?と。。。
案の定、今まで食べたことのないジューシーなステーキで、ワインとのマリアージュも最高だったのは言うまでもありませんでした。 (グルたむ)
※肉の線維にそって、縦切りでカットしたブロック肉をロースした肉塊が、最終的にお客様の口に入る時点までアドバイスが必要です。お客様にも縦切りで口に入れていただきたいですよね〜。
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