ワインは、目と鼻と舌で楽しむことのできる飲み物です。
目ではワインの色や濃淡などの外観を、鼻ではワインの香りを、そして舌ではもちろんワインの味わいを感じ取ることができます。
ワインの外観、香り、味わいの3点を感じ取ることを、テイスティングと言います。 ワイングラスに注がれたワインを飲む前に、まずは色や濃淡、透明度や粘度など、ワインの外観を目でチェックします。
その次に、ワイングラスから立ち昇る香りを確認します。
そして最後に、ワインを口に含んで舌で転がすように味わうのです。
ワインのテイスティングをより正確に行うために、ワイングラスは脚のついたチューリップ型の基本のもので、なおかつ透明で装飾のないものを選びます。
そして、グラスにゴミや汚れや臭いがついていないかどうか、しっかりチェックするようにします。
また、ワインの色を見るためには光も重要です。
本当の色を見るために、蛍光灯の下ではなく自然光に近い照明の下で行うようにします。
それから、ワインの香りを正確に知るためには、ワインの香りを打ち消すような臭いのない場所で行うことも重要です。
では、具体的なテイスティング方法を見ていきましょう。
ワインのテイスティングを行うときは、まず、白いテーブルか、テーブルの上に白い紙を置き、ワイングラスに4分の1程度の量のワインを注ぎます。
ワインの香りを確認するときにグラスを大きく回転させるので、そのときにワインがこぼれないような量にしておく必要があります。
グラスにワインを注いだら、グラスの脚の下を親指と人差し指でつまむようにして持ち、グラスを45度ぐらいに傾けてワインの色を観察します。
外観の見方には3つのポイントがあります。
まず1つめのポイントは、ワインの色の濃淡です。
葡萄の品種によってワインの色合いは異なりますが、赤ワインの場合は色の濃淡でワインの質が分かります。
色が濃ければ濃いほど、渋み成分であるタンニンや色素成分であるアントシアニンが多く含まれた良質のワインであることを示しています。
その反対に色が薄い場合は、時間をかけずに醸造されたり、完全には熟しきれていない葡萄を使用してつくられた、あまり質の良くないワインだと言うことができます。
2つめのポイントは、ワインの清澄度です。
ワインが澄んでいればいるほど新鮮で、濁りがある場合は劣化が考えられます。
3つめのポイントは、ワインの粘度です。
ワイングラスを軽く回して、グラスの内壁に残ったワインが下に流れ落ちる様子を観察します。
この流れ落ちるワインのしずくを、ワインの「足」や「涙」と表現します。
ワインのしずくが早く流れ落ちる場合は、ワインの粘度が低いことを示しており、その反対にゆっくり流れ落ちる場合は、アルコールやグリセリンなどのエキス分を多く含み、長期熟成に耐える良質のワインであることを示しています。
発泡性のスパークリング・ワインでは、気泡の具合も観察します。
細かい気泡がいつまでも昇り続けるワインが、良質なワインだと言えます。
ワインの外観を一通り観察したら、続いてワインの香りを確認します。
テイスティングの熟練者ともなれば、ワインの香りだけで熟成度や葡萄の品種まで分かってしまうと言われるほど、香りはワインにとって重要な情報源になります。
ワインは空気に触れることによって徐々に香りが変化していくので、少なくとも2回、可能であれば3回、香りを確認するようにします。
まず最初に香りをみるときは、グラスの中のワインをなるべく揺らさないようにして、鼻を近づけて簡単に香りをかぎます。 このときに感じられる香りは「アロマ」と呼ばれる果実香で、もともと葡萄が持っていたり、発酵中に発生する果実の香りです。 アロマは、葡萄の品種や熟成度などによって、さまざまな香りにたとえられます。
果実の香りがはっきりと感じられるワインほど、良質のワインだと言えます。
2回目に香りをみるときは、グラスの底をテーブルにつけたままの状態で、グラスを大きく回転させるようにしてワインを回します。
このことをスワーリングと言いますが、こうすることによって香りは数段強くなり、空気によく触れることで、眠っていた香りが蒸発して立ち昇ってきます。 このときに感じられる香りは「ブーケ」と呼ばれる熟成香で、ワインが熟成されていく過程で生まれる香りです。 熟成度や熟成の仕方などによって、さまざまな香りが現れてきます。
2回のテイスティングが一通り終わってから30分以上経つと、3回目の香りを確認することができます。 このときに感じられる香りは、若いワインが今後さらに熟成したときの香りです。
香りを確認するときに共通して言える大切なポイントは、香りをあまり長い時間嗅ぎすぎないということです。
香りを嗅ぎすぎると、嗅覚が麻痺してしまい、香りの記憶が混乱して正確な判断ができなくなります。
香りの特徴をつかむときに重要なのは、香りの第一印象をしっかりとらえることです。
ワインの外観、香りを確認したあとは、テイスティングの最終段階としていよいよ味わいの確認に入ります。
味わいを確認する際には、いきなりたくさんの量のワインを口に含むのではなく、大体10ml程度の少量を口に含んで、舌全体にゆっくりと広げていきます。
舌は、先端で甘みを、側面で酸味を、奥で苦味を感じるようになっているので、舌のすみずみまでワインを行き渡らせて、舌全体で味わうようにします。
ワインの味は、発酵後に残っている糖分による甘み、ワインに含まれるリンゴ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸などによる酸味、タンニンによる渋みや苦み、アルコール度の4つの要素で決まります。
一般に赤ワインでは甘みはあまり感じられず、糖分をすべて発酵させてしまったワインは辛く感じます。
また、寒い地方でつくられるワインほど酸味が強くなる傾向があり、特に白ワインでは酸味が強く現れます。
それから、渋みや苦みは葡萄の果皮や種に含まれるタンニンによるもので、若いワインほど渋みや苦みを強く感じ、熟成されたものは渋みや苦みが抜けてマイルドになります。
そして、アルコール度が高いほどコクや甘みが感じられます。
味わいの評価には5つのポイントがあります。 1つめのポイントは、「ボディ」と呼ばれるワイン全体の味の重さで、一般に「コク」と呼ばれているものです。 糖分やエキス分、アルコール度などを十分に含むワインはコクのあるワインであり、特に味が濃厚で長期熟成に耐えるタイプをフルボディ、軽いタイプをライトボディ、それらの中間のタイプをミディアムボディと呼んでいます。
2つめのポイントは、甘み、酸味、渋みや苦み、アルコール度のバランスです。 4つの要素のバランスがうまく保たれているワインがおいしく感じられます。
3つめのポイントは、舌で感じられるワインのなめらかさで、一般に「きめ」と呼ばれているものです。 成分の粒子がきめ細かいほど舌の上でなめらかに感じられ、良質のワインだと言えます。
4つめのポイントは、一般に「切れ味」と呼ばれているもので、特に辛口の白ワインに多い評価です。さいごに、5つめのポイントは、ワインを飲んだ後に残る後味です。
口の中に風味のほのかな余韻が後味として残りますが、その余韻が短いものはそれほど良いワインとは言えず、心地よい風味の余韻が長く楽しめるワインほど良質なワインであると言えます。
ワインにはさまざまな種類やタイプがあるので、目と鼻と舌という感覚をフルに使って、ワインごとの個性の違いを楽しんでみましょう。
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