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イベント 生ハム/エンブティード

ハモンイベリコベジョータとハモンセラーノからいろいろ血統や産地のことを考えてみる

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6月11日に行われましたスペインワイン&フード商談会・大阪では写真の生ハムを出展しました。左はフビレスのハモンイベリコベジョータ44ヶ月熟成、右はカサルバのハモンセラーノ40ヶ月熟成です。写真を見比べますと、ハモンセラーノの方が生ハムのカットの断面が霜降りになっているのがおわかりになるでしょうか(よく見えない写真ですみません)、一方左のハモンイベリコベジョータは霜降りが無く肉の色合いも赤黒いです。こちらはイベリコ豚の純血種(血統100%、プーロPuroと呼ばれます)です。
 一般にイベリコ豚は霜降りが多いものと思われておりますが、それは純血種ではなく掛け合わせたイベリコ豚に霜降りが多くでます。純血種のイベリコ豚はむしろ霜降りが入りにくく、ベジョータにおいては脂が多く、しかしながらモモなどはほっそりと長いという特徴を持っています。写真をみても右のハモンセラーノと比べますとほっそりとしています。
又ロースなどは芯の部分がすごく細く小さくなります。かわりに背脂が10cm近くになることもあり脂に圧迫されたロースの芯はかなり細くなるという特徴があります。

 反対に、掛け合わせたイベリコ豚は霜降りが一般的に入りやすくなります。 イベリコ豚はデュロック種という豚と掛け合わせることが多いですがこのデュロック種と掛け合わせることで霜降りが入りやすくなる傾向にあります。

では?生ハムにした場合の、純血種のハモンイベリコベジョータと純血では無いハモンイベリコベジョータはどちらが美味しいでしょうか?
これは好き好きと言うほかはありません。純血種は霜降りこそ少ないですが、イベリコの味わいの特徴であります濃い味わいと脂の強さをより感じることが出来ますし、掛け合わせ(混血の一般的なもの)のハモンイベリコベジョータは、純血よりもマイルドな味わい深さと霜降りが入りやすいことによって脂の味わいを一緒に楽しむことが出来ます。また生体も大きくモモに肉が大きくなることからより長い熟成をかけることも出来ます。

最後にこのハモンイベリコベジョータのPRを少しだけ。。。
この生ハム(フビレスのハモンイベリコベジョータ)はスペインはアンダルシア地方のグラナダ県のトレベレス地方で熟成されていますが、原料肉はなんと500km以上離れたエストレマドゥーラ州のバダホスから輸送されものを熟成しています。
トレベレス地方の特徴は、19世紀中頃にイザベル2世がここで出来る生ハムにいたく感動しスペイン王家の紋章の使用を認めたことからも、生ハム熟成には最適な土地です。
弊社が取引している生ハム会社は、この他ブルゴスから北東に60km行ったところにあるカサルバもそうですが、どちらもこれらのイベリコ豚の生産地でも飼育地でもありません。

僕は生ハムの熟成に最適な土地とイベリコ豚の生産に適している土地とは必ずしも一致しないと思っています。
この2つの生産地の特徴は、清涼な風が吹き、スペインでも割と寒い地方で寒暖の差が多いと言うことです。フビレス村は緯度は低めですが標高が高く冬は雪が降るほど寒い地方ですし、ブルゴスも標高こそフビレス村まで無いですが、緯度が高いことから冬は寒い地域です。ちなみにグラナダの緯度は37度ほどですが日本では新潟がこれにあたりますし、ブルゴスは札幌とほぼ同緯度です。暖かいイメージが多いスペインでさえ緯度が高いことにびっくりです♪どうりでバルセロナなど行きますと夏など21時過ぎても明るいわけですね。

下記はフビレスのイベリコ豚の経路です。Bが生産者の近くのバダホス、Aがフビレス村です。おおよそ550km離れています。ざっと東京駅から新大阪の距離です。この距離をトラックで肉を運び、生ハムの熟成に適したところで生ハムを作っているのがトレベレスのフビレス村です。

一般的にイベリコ豚の飼育地(生産地)にある生ハムのメーカーが集中している地方は、ハヴーゴ(ハブーコ)やウェルバなどが有名です。特にハヴーゴの生ハムは一級品と呼ばれているようですが、この地域の特徴をあげてみることにします。
ハブーゴはスペインでも比較的南にありフビレス村などと同緯度ですが、標高が低いため年間を通して温度が高い地域です。温度が高い地域で生ハムを熟成しますと比較的早く熟成が完了し生ハムとして仕上がりますし、大きな重量がある後ろ足(生ハムの仕上がりで10kg以上のもの)は温暖な地方では熟成が難しい特徴があります。
どうしてか?という理由ですが、大きな後ろ足は、じっくりと長い時間をかけて乾燥し熟成がかかってくるわけで、その為にはある程度低い温度が必要です。温暖な地域でじっくりと熟成をかけることが困難なのはこのためです。大規模な生産者は塩漬けから発酵がかかるまでは冷蔵庫に入れて徐々に乾燥発酵をしていき数ヶ月後に常温にだして熟成をかけますが、大きな後ろ足は冷蔵庫の時点で熟成が進まないので常温に出すことが出来にくいのです。その為に、ハブーゴなどの温暖な地方では、割と小さい生ハム(仕上がりで6kg〜8kg止まり)が多いのです。
決して小さい生ハムが、良くない生ハムではありませんが、小さな生ハムは、早く熟成をしてしまうために、熟成期間が短く、比較的堅く、しっとりとしにくい特徴があります。その反面平均温度が高いところで熟成をかけているため、強い味わいの生ハムが出来ると言うわけです。

涼しい地域で熟成される生ハムはこの逆であり、比較的おとなしい味わいの生ハムが出来上がります。
しかしながらもっと強く香りを出したい時などは、温度の高いところ(25℃から30℃以上)に1〜2週間吊して使うだけで風味が強くなったりします。お店に吊しながらこのみの熟成加減にすることが出来るわけです。

最後に生ハムの管理ですが、一度常温に戻した生ハム(骨付きのものです)は、決して冷蔵庫に入れたり出したりしないことです。常温に戻したら使い切るまで常温です。
 

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