美しく清潔で壮観な熟成庫内。床は総大理石張りだ。フビレス社を訪れたこの時期にはハモンの仕込みはしていなかった。そのほとんどを冬場に仕込むという。ちなみにハモンの数は23万本ほどある。
フビレス社は7月~9月の時期はいっさいハモンの塩漬けをしない。このことが品質の高いハモンを製造する一つの大きな理由になっている。その理由は2つある。
一つ目の理由は、スペインの夏場は日差しがかなり強く、豚の生産地の温度は40℃前後の暑さになるために、屠殺された豚の肉質も良くないし(水などを飲み過ぎたり、暑さで体力が衰えている)、生産された豚の鮮度にもいいことはないということが一つあげられる。
※人里離れた山中に圧倒的なボリュームの熟成庫が存在する。ずっと奥まで自動で移動できるレールが敷いてある。シェラネバダ山脈の澄んだ乾いた風を、夏場は夜に取り込み日中は調節して締めてある。大理石張りの建物の効果もあり夏場の日中でも熟成庫の温度は24℃以上になることはなく、冬場は外がマイナス10℃になっても4℃前後を保っているという。またこの地域の特徴としては1日の寒暖の差があり、夏でも夜になると乾いて澄んだ風を取り込むことができることが上質な生ハムを作ることができる要因となっている。
2つめの理由は、夏場には生の肉を塩漬けから仕込んでいくには適したシーズンではなく、日中でも乾いて冷たい空気が吹き始める10月以降がハモンの塩漬けの最適なシーズンとなる。暖かい時期は一切の塩漬けを行わない。肉質も良い豚を最適な風が吹き始めるシーズンから仕込める余裕こそが機械化がなせる技だ。せっかく生ハムに良い環境で熟成をかけられても仕込む時期に妥協をしていたのでは良い生ハムはできてこない。実はこれは良い生ハム作りにはかなり影響してくることの一つだ。年間を通して一定の忙しさのほうが経営がしやすく人員の確保などもしやすくなるから、普通のメーカーは夏場にもハムの塩漬けを行ってしまうことになる。そうすると生ハムには当たり外れがでることになってしまう。わかっていながらやらざるをえない状況がそこにはある。フビレス社は恵まれた自然環境と職人の技を、機械化を導入することによって理想的な生ハム作りの環境を作り上げ妥協を許さない一貫した良質な生ハム作りを貫いている。
これが夏場に仕込みをしない2つめの理由だ。 訪れたときには67歳の社長が、昔は1本ずつ手と足で地下のボデガから上まで生ハムを上げたけど、今は機械で自動で出来るために質のいい生ハム作りに専念できるようになった。。。と語っていたのが印象的だ。
この山中で生ハム作りには最新鋭ともいえる設備が備わっているのは脅威だ。
訪れたこの時期(夏)はいっさいの仕込みは行われないが、定期的に工場の清掃は行われている。
※豚の肉質がいい冬場に80%のハムを仕込むことができる理由,のまとめ
・夏場はいっさい豚モモの塩漬けをおこなわない。その理由は、夏場の豚肉は肉質が悪いから。屠殺された豚肉の鮮度もあまりよくない。
・夏場は塩漬け後の熟成に良い空気(風)がない。
・生ハム作りに理想的な環境と職人のこだわりがあり機械化との融合によって、秋口からいっきに生ハムの仕込みが出来るために、「夏場に塩漬けをする」という妥協をする必要がない。トレベレスの生ハムのうち40%をフビレス社の生ハムが占めている。