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■生ハム!

生ハム(ハモンセラーノ)カッティング講座♪

ハモンセラーノ&イベリコ生ハム カッティング講座

スペイン大使館でハモンセラーノのカッティングの仕方をやった。
以下は説明をもとにして僕の主観もいれながら書いてみたので参照してほしい.

スペインのハモンセラーノ(生ハム)のブランドはマルプラ社のもの。
弊社も扱っている。塩分がやさしいのと熟成されたソフトな感触が美味しい生ハムだ。
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カッティングしたハモンセラーノも立てかけておく事で切り口が美しく見えるという.

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カッティング用のハモネロ(生ハムホルダー)にしっかりとセットする.
爪の底が上を向くようにセットする.この面は水分が多いので、この面を上にすることによって、骨をはさんだ水分の比較的少ない部分にも均等にいきわたることができる.(このまま1ヶ月~2ヶ月かけてカットすることを想定した場合)

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先ず生ハムの足首のところに切り込みを入れて、皮を満遍なく切り取っていく.
黄色い脂は酸化しているので、丁寧に取り除いていく

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このぐらい皮を取り除いたら、切り口にかぶせる「トシーノ(ラルド)」を数枚最初に切り取ってしまうといい.

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カッティングに入る.生ハムをカットするナイフはペンティングナイフの少し大きめで比較的やわらかいナイフがいい.生ハムの切り口に沿ってナイフが入りやすくなる.

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最初はテーブルと平行になるように意識してカットしていく.
こうすることによってきれいな切り口になるし、カットしやすい.
ハモンセラーノなどの生ハムは、適度な大きさ(一口で食べられる)で、薄くカットするのがコツだ.

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しばらくカットすると腰骨が出てくる. 腰骨が出てきたら腰骨の周りにカッティングを入れることによってきれいにカットすることができる.ハモンセラーノなどの生ハムは、写真に向かって正面(皮がないところ)が、乾燥していて硬く、後ろの面(皮の面のところ)がしっとりとしている.なかでも腰骨と皮の間の生ハムがしっとりとしていて柔らかい.カッティングして盛り付けるときには、多少の工夫が必要となっていくる.

僕が考えた生ハムの差別化

①比較的乾いた生ハムと、しっとりした生ハムと、腰骨と皮の間の柔らかくしっとりした生ハム3種類を平均的に盛り合わせて提供する.

②上記の3種類を分けて提供する.上記の3種類も味的には特徴があるので、それを生かした提案だ.

☆皮がないところの固い生ハムはオリーブオイルにつけておくことで柔らかくなるので、オイル漬けで提供する.もちろんオリーブオイルの香りも重要な要素になる.比較的癖がなくまろやかなスペイン産のオリーブオイルで漬け込むことによって差別化して提供することができる.

☆その他の2つの部位の生ハムだけども、足首に違いところは、肉の味が濃いところなのでそれを強調して提供する.
☆腰骨と皮の間は、柔らかくしっとりとしているところなので、その点をしっかりと理解してもらう.

ただし次の点も理解してもらうことが大切かもしれない.
ハモンセラーノ、ハモンイベリコ、又はイタリアのパルマハムなどの骨付き生ハムは塩漬けして長期熟成をさせるがその際には足首が上で腰骨の部分(ロース側)が下になり12ヶ月から場合によっては30ヶ月ほど吊るされ熟成される.
そうすると重力の関係で水分が下に集まるばかりか、塩分も下に集まる.よって比較的薄味なのが足首の部分だ.
足首の部分は運動する筋肉が集まっている部分なので味が濃く薄味なので、生ハム通の人はここを好むという.

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腰骨の周りはしっかりしたペンティングナイフのようなものでしっかりと切り込みを入れる.
切込みを入れることでカットした際に骨離れが容易になる.

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骨に向かってナイフを入れるときは手などを切らないように慎重にカットする.
写真では熟練したシェフがカットしているからだが、ナイフの向いている先に手を置く場合は最新の注意が必要だ.

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ラルドを2枚かぶせたところ.
生ハムのカッティングが終わった場合はこうやって、ラルドを上に乗せておく事で乾燥が防げる.
このまま保存する場合は、この上からラップなどで覆って保存をする.冷蔵庫などには入れずに少し涼しいところで十分だ.冷蔵庫だと熟成が進まずに味がこなれてこない.常温におくことで熟成が進んで味わいが深くなってくると思う.
夏場の暑いときだけ、冷房の効いたところとかワインセラーなどにおいておくといいと思う.
生ハムを保存して熟成させるために専用の冷蔵庫を購入するのもいい方法だと思う.その際には温度は何度がいいのか?そのお店のノウハウになり差別化できると思う.

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写真ではわかりづらいが、骨付き生ハムをきり進むにつれて、ナイフに隠れているところに骨の間接が出ていてまっすぐ下までカットすることができなくなる.こうなったらこんどは骨の周りをカットしていく.皮側も皮を取り除いてカットしていく.
写真を見ると今まさにカットしている最中だがナイフに向かって右側がスネ側の生ハムだ.
割と通好みのところ.ナイフに向かって左側の手前側は乾燥していて比較的硬いところだ.
オリーブオイル漬けや、極薄のカットなどで盛り合わせで提供したい.
写真の下にある小さいナイフが腰骨の周りをカットする際に使いやすいという.

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このぐらいまで切り進んだら、こんどはひっくり返して裏の面をカットしていく.
裏の面をカットする場合にはこの面が今度は下になってしまうが、やはり乾いてしまうので何か工夫が必要と思う.
オリーブオイルを塗っておくのもいい方法だと思う.

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ひっくり返したところ.
皮を丁寧に取り除いていく.皮は水分の蒸発を防ぐのでこの場合は一度にカットしてしまうので皮をすべて取り除いているが、通常は何日かでカットするのでカットする都度、皮を取り除いていくのが最適な方法になってくる.
余談だが、皮は通常は捨ててしまうが、きれいなところは取っておいて、お湯できれいに洗ったあと、一度にこぼしてじっくり煮込むことでゼラチン質のしっかりしたスープが取れる.骨を入れてもいいと思うが、脂は酸化している場合が多いのでしっかりと取り除くことがコツだ.

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表から見たところ.
少しカットもしてあるが、この部位は「しんたま」と呼ばれる部位で、比較的乾燥しているが、肉の味わいは濃いところだ.カットをこの部位からせずに「ランプ側(ひづめの底を上にした側)」からカットすることによって、多少なりとも水分の移動を考慮してこの部位も多少なりともしっとりとした味わいにしてからカットをする意識が美味しい生ハムを提供することにつながると思う.

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裏面の「しんたま」側をカットしていると、そのうち間接にあたってまっすぐカットすることができなくなる.
その際には写真のように間接の皿をとりのぞいてしまう. 比較的上級編にあたるが、一度部位を覚えてしまうと比較的楽にできる.やり方としてはナイフをVの字に入れて掻き出すように取り除く.

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取り除いた瞬間.
こうすることによって真っ直ぐにカットを進めることができる.

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最後まできれいにカットできる.美しく直線になっている.

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これからあと少しカットをしたら骨を取り除いてしまうほうがいい.

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表からみたところ.
あと少しカットを進んでいくことで腰骨も楽に取れる.

骨付き生ハムのカットの仕方は、ハモンイベリコ、パルマハム、サンダニエーレハムなどいろいろあるが基本的にはこの方法でカットをすることができる.
最初のカットを振り返ってみると、最初はテーブルに平行になるよう努めてカットをすることによって、このように最後まで真っ直ぐにかっとすることができる.その点でも最初のカットが肝心になってくると思う.

ヨーロッパの生ハムはローマ帝国時代までさかのぼる歴史があるという。
ローマ帝国時代にスペインなども征服され、そのときの食文化の交流がありその後独自の食文化になったのだ。昔は冷蔵庫がなかった時代だからこそ生ハム作りのノウハウが確立された.当時は冷蔵庫がなかったために冬場に豚をつぶして塩漬けして、熟成をさせた。
良質の乳酸菌が生えることで肉が守られ、塩分との相乗作用でタンパク質がうまみ成分のアミノ酸に変化をして生肉と比べると数十倍もの旨み成分が蓄えられていく様は、食の神秘すら感じられる。
この偉大な食文化を今は何処でも味わうことができるが、現代の様々な料理に応用してこそ、古代人が培ってきた食のノウハウを引き継ぐことができ、開花させることができると思う。

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