ベンハミン氏は1998年に再び「クエバ・デ・コンタドール」を醸造。これら2作をうけて、なおも比類無きワイン「コンタドール」が1999年に醸造されることになります。そして、翌2000年には「コンタドール」と「ラ・クエバ・デル・コンタドール」の2種のワインを醸造し、15年間勤務したアルタディを後にします。
この2000年の「コンタドール」がパーカーポイント98点を獲得したのを皮切りに、2001年が98点、2002年が96点、2003年が99点、そして2004年、2005年と連続して100点という快挙を成し遂げていきます。
ブドウ畑
ベンハミン氏はアラベサのサン・ビセンテ・デ・ラ・ソンシエラ、ブリオネス、ラバスティダに、トータル32ヘクタール、58のブドウ畑を所有しています。
いずれも彼の審美眼にかなったものばかりですが、特にサン・ビセンテ・デ・ラ・ソンシエラ城の対岸にある、エブロ川の畔の畑「ラ・リンデ」のテロワールは最高で、彼が最も大切にしている畑の1つです。父親アンドレス・ロメオが植樹し手塩にかけて育て上げたもので、ここから穫れるテンプラニージョからのみで「ラ・ビーニャ・デ・アンドレス・ロメオ」が醸造されます。尚、コンタドール用の葡萄はその年の最高の畑から収穫される葡萄で醸造されます。
ブドウの収穫は、35人のスタッフを総動員し全て手摘みで箱に入れられます。これらは最長でも45分以内にボデガに運ばれ、直ちにブドウの選別が始まるのです。
1)アンドレスの葡萄畑
葡萄畑は「ラ・リンデ(La Linde)」でベンハミン・ロメオ氏の父アンドレス・ロメオ氏が植樹した畑でエブロ川が蛇行する場所に位置しちょうどサン・ビセンテ・デ・ラ・ソンシエラ城の川を挟んで対岸にあたります。3,5haの畑は養分に乏しい土地で、粘土質でその下の地層は石灰質からなります。エブロ川の傾瀉から生じた豊富な丸石によって水はけが良い土地です。この畑の葡萄だけでラ・ビニャ・デ・アンドレス・ロメオを作っています。羊の糞をたい肥に混ぜるなど彼の葡萄を作る農法は「ビオ・ディナミカ(bio dinamica=バイオ・ダイナミック)」と言えます。葡萄1本の木からアンドレスが1本作られます。樹は35年の素晴らしい葡萄の木でテンプラニージョだけで作られます。
※バイオ・ダイナミック農法=有機栽培の一種であり、農薬と化学肥料を使わない農法で肥料も動物の糞などの自然のものを使用し土壌を破壊しない農法です。
2)ブリオネス村の葡萄畑
わりとボデガから離れたところのブリオネス村にこの葡萄畑はあります。テンプラニージョ、ガルナッチャ、ガルナッチャブランコの木がありリオハには余りない木で100年以上経っている木もあります。葉が大きい方がガルナッチャ、小さい方がテンプラニージョです。又白ワイン用のガルナッチャブランカ、ビウラ、マルバシアの木もあり、最高の白ワイン、ケ・ボニート・カカレアバになります。
※ 「リオハでは今年から(2010年)ソーヴィニオンブランとシャルドネ(外来種)の植樹が許可される見込み。でも自分は昔ながらの葡萄の種類にこだわりたい」とはベンハミン伝。「昔からの葡萄は気候風土と土壌に合っているから最高のポテンシャルを発揮している」とベンハミンは言います。
3)ムルムロンの畑(水のサラサラ流れる音、もしくはささやきと言う意味)
エブロ川の直ぐ近くで、マスエロ種、グラシアーノ種など2つとも若干酸味がある葡萄を作っています。ブレンド用としてワインを長持ちさせる(酸味を付ける)効果があります。 未だ植え付けて3年の畑で原料には使っていませんが、その上の畑にはテンプラニージョ60年の木、とビウラ(白)の木があります。
ベンハミンの畑はバソ(コップ型)のスタイルで葡萄の棚をつくりません。又は「タブレット(酒杯)型」と言いますが東西南北を向いた各葡萄の様々な味わいをトータルして深みのある味にしていくためです。
4)ボンボンの畑=畑の名前―テンプラニージョオンリーの畑
コンタドール用の80年の木、プレディカドール用の45年の木。
ボンボンとは、昔家畜をつないでおいたり風よけ兼、休憩所小屋(スペイン語ではチョソ(Chozo)と言いますがボンボンチョコラの形に似ているのでボンボン地区(畑)と名付けられました。他の葡萄畑より、より選別された畑です。
ボデガ
1985年に醸造家としてデビューして以来、 自身の創造性を100%発揮した最上質のワインが造れるボデガを建立することを考えていたベンハミン氏は、2008年初夏、ついに「ボデガ・コンタドール」を完成させます。延べ面積は2,700平方メートル、150,000本の醸造キャパシティがあります。カタルーニャの若い建築家エクトル・エレラが設計し、ボデガ自体がさながら「アート作品」の様相を呈しています。
ボデガ内もアートのための贅沢な空間が随所に設けられており、ベンハミン氏の友人アーティストの粋なオブジェや絵画、写真が展示されています。
コンクリート打ちっぱなしのモダンなボデガは、クエバがあるサン・ビセンテ・デ・ラ・ソンシエラ城を臨むブドウ畑の真ん中にあります。将来、1Fが緑、2Fがコンクリート、3Fが岩山のイメージになるように造られ、 数十年後には 周囲の光景と完全に同化させるという計画です。クエバと全く同じ方向(北)を向いており、貯蔵庫は同湿度、同温度に保たれています。
2階には広大なテラスが設けられており、ここはベンハミン氏が栽培する野菜の他、無数のラベンダーやローズマリーで埋め尽くされています。これらハーブの芳香は、貯蔵庫(1階)の天井に設けられた専用の通気口から中に入り、フレンチオーク樽で熟成中のワインに影響を与えます。