
サイズ: 約10×10×5cm
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スペインは、牛のミルクのチーズより、羊乳のチーズの方が圧倒的に多いので、スペインでは羊のチーズがごく一般的ですが、その中でもラマンチャ地方で作られる『マンチェゴチーズ』は世界的にあまりにも有名です。
個人的にはマンチェゴチーズも好きなんですが、このチーズは日本人向きでは無いかも知れない、、、と。特に羊のチーズ(熟成させて出来るナチュラルチーズですね)に関しては、羊特有のクセがチーズにおいても気にする方がいるだろうな、、、と。
バランスの良い美味しい羊のチーズを探すために数年間費やしました。フランスで開催されるチーズ専門の展示会をいくつか点々とはじまり、スペインの展示会数回、そして生産者訪問10社近く、、、。 中には、それこそビル4,5階ぐらいの巨大なタンクが数本空に向かってそびえているメーカーなどもあり、契約農家50数件から毎日羊のミルクが届くというところもあって、この 国はこんなに羊がいるんだな?と、あらためて思ったこともあります。 しかしながら、僕の目指す羊のチーズのメーカーは、そんな巨大なタンクを持っているところでは無く、小さなタンクでも良いから自社の生産するこだわりのミルクだけを丁寧に作っているメーカーということにありました。 きっとそういうメーカーは、美味いチーズを作っているはずだ、、、。という、あまりにも大量生産のチーズメーカーを訪問したせいか、そんな理想のようなことも思ってしまっていたのです。
そのような理想を掲げて、サラゴサの展示会に行った際に、比較的地元に近いメーカーで、非常に美味しい羊のチーズメーカーに出会いました。 このメーカーは、家畜の飼料メーカーが分社してやっているところで(今になって思えば社長のアルベルトは次男で、長男は飼料メーカーを継いでいたのですが)、羊の飼育から繁殖、羊舎の周りには羊用の穀物を栽培し、 ビールの絞りかすなども与えて、より美味しいミルクがでるようにナチュラルな飼育をしている。そして出来たミルクだけを全量、自社のチーズの生産に当てているメーカーでした。 通常の農家はミルクを1リットルあたり幾らでチーズメーカーが引き取ってくれるのでそんな工夫はしませんよね。
そしてこのサラゴサの展示会でこのチーズメーカーに対して印象に残っていた我々は、翌年のマドリッドの展示会でも、この生産者に出会うことになります。その間、さんざん他のメーカーも訪問していましたが、 やはりこれほどの美味しいチーズを作っているメーカーとは出会うことはありませんでした。
その後、工場訪問を数回して現在の取引となるわけですが、取り引きを開始したときには全く無名のチーズメーカーでした。 しかし取引を開始してから1年ほど経ち、アルバラシンのチーズが一躍有名になることがあったのです。
それは、ロンドンで開催されたワールドチーズアワード2010でアルバラシンの金ラベルというチーズが金賞を受賞したことです。これには、アラゴン州あげての騒ぎで、TVなどで一躍取り上げられて有名になったのです。 やはり、スペインは農業国家なんだな!と思いました し、これによりアルバラシンチーズがヨーロッパを中心に知れ渡ることになり、一時製造は数ヶ月から1年待ちの状態になったほどです。 と言いますのも、金賞受賞した チーズのオーダーが、今までの販売先からもかなり増えて対応に追われていたからです。 有名になったとたんに様々な国やインポーターからも(日本からも!)取り引きをしたいと申し出がありましたが、とにかく1日に小さなステンレスの釜でひと釜しか出来ない製造を続けているわけですから、全てを断って今日に至ります。
前置きが非常に長くなりましたが、アルバラシンチーズの中でも一番のウリがこのチーズ、ドンマヌエルです。 このチーズは無冠のチーズですが、なぜか? それは、あまりにも手間と15ヶ月以上という熟成に費やす時間がかかるために、製造が間に合わず、特定の顧客しか対応が出来ないため、国際チーズコンクールに出せないチーズなのです。
ドンマヌエルは熟成の長いチーズで1個の原木で仕入れての日本での熟成も可能ですが、世界的にみれば、フランスのコンテチーズ、そしてイタリアのパルミジャーノチーズと肩を並べるものです。 しかしドンマヌエルチーズは羊のチーズですから、牛のチーズが持っていない奥深い味わいがあるチーズです。じっくりとご賞味下さい。